「勇者の旅」プログラムとは

どのようなプログラムなのでしょうか?

プログラムの対象・内容・方法について

『勇者の旅』は、小学校高学年児童を対象とする、1回45分×全10回の予防教育プログラム(表1)で、認知行動療法の考え方に基づいて構成されています。『勇者の旅』プログラムの授業中、子ども達は各自がワークブックに書き込みをしながら、自分自身の不安の問題を解決する方法を考えたり、実際に行動したりすることを通して、不安への対処力を身につけていきます。

ワークブックは、子ども達1人1人が勇者となって、不安の問題に立ち向かいながら『勇者城』を目指して旅をする、というストーリー仕立てになっており、不安の問題への対処法を楽しく学習できる内容となっています。毎回、授業で学んだことを実生活場面で身につけるために、『自主トレ(ホームワーク)』が提示されます。このホームワークを提出することにより、一歩一歩『勇者城』に近づいていくことができます。

表1 『勇者の旅』プログラム10ステージの内容
表1 『勇者の旅』プログラムの内容と構成

『勇者の旅』ワークブックの見本
『勇者の旅』ワークブックの見本

認知行動療法ってなんですか?

認知行動療法とは、認知(考え)と行動のパターンを見直す図1ことにより不安や抑うつなどの感情をコントロールすることを目指す精神療法(心理療法)のことです。認知行動療法は、不安障害やうつ病などのこころの病気に対して、抗うつ薬等の薬物治療と同等か、もしくはそれ以上に効果があるというエビデンスが、数多く報告されている(Roshanaei-Moghaddam et al. 2011)他、近年は予防教育アプローチにも用いられるようになり、その有効性が示されています(Neil & Cristensen, 2009)。『勇者の旅』プログラムは、以上のような認知行動療法の理論とエビデンスに基づき、学校で予防教育の授業を行うために開発された、日本の子ども向けのプログラムです(表2)。

図1 認知・行動・感情の関係

表2 『勇者の旅』プログラムの内容と構成
表2 『勇者の旅』プログラムの内容と構成

なぜ“不安”なのでしょうか?

学校現場では、学校不適応、不登校、いじめ、自殺などが大きな問題となっていますが、これらの問題は“不安”という感情と密接に関わっていると考えられるケースが多くあります。文部科学省が教員を対象に毎年実施している「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」をみても、不登校児童生徒が不登校となったきっかけは「本人に係る要因」が最も多く、そのうち「不安の傾向がある」が最も多いと考えられている状況にあります(平成27年度)。また、子どもの不安の問題は、不安症の他、うつ病などの精神疾患の危険因子にもなるといわれています(Cole et al., 1998)。これらのことから、こころの病気の予防や学校現場における生徒指導上の問題解決には、不安の問題に焦点化した予防的アプローチを行うことが、最も必要かつ有用であると考えられます。

『勇者の旅』にはどのような効果があるのでしょうか?

図2は、小学校4~6年生の13名を介入群、16名を統制群として、介入群児童に『勇者の旅」を実施し、プログラム実施前・実施後・フォローアップ(プログラム実施3ヶ月後)の計3回、子ども達の不安スコアをSCAS(スペンス児童不安尺度)という質問紙で測定し、スコアの変化を確認したものです(Urao et al., 2016)。この研究の結果、統制群児童(青実線)に比べて介入群児童(赤点線)の不安スコアが下がっていることがわかります。また、児童の不安を保護者が評価した図3を見ても、同様に介入群の不安スコアが大きく下がっています。
これ以外にも、いくつかの準実験的研究で『勇者の旅」の不安低減効果が確かめられており、不安スコア(SCAS)だけでなく行動問題スコア(SDQ)についても、統制群に比べて有意な改善がみられています。

図2 介入群児童と統制群児童の不安スコアの変化

図3 介入群保護者と統制群保護者評価による児童の不安スコアの変化

学校で『勇者の旅』の授業を受けた子ども達の感想のご紹介

以下に、『勇者の旅』プログラムの授業を受けた小学校6年生の感想をご紹介します。

  • 不安な気持ちを小さくする方法を知ることができてよかった。
  • 勇者の旅をはじめてから、最初は不安だったけれど、旅をつづけていくようになってから、不安な気持ちもなくなったし、心がやわらいでよかった!!
  • 勇者の旅をやって、不安な気持ちになっても、あまり考えこまなくなり、気持ちがすっきりするようになった。階段を少しずつのぼっていけて、ドキドキレベルも少しずつ下がっていった。
  • 勇者の旅で、不安が必要だとわかった。
  • 勇者の旅をやって、やるまえに比べて不安が少なくなった。試合などの時にきん張したときのリラックス法がたくさんわかった。
  • おもしろかった、たのしかった!
  • 不安になったときに使える
  • 勇者の旅を通して、“いやなことや不安なこと”を、いかに“楽しみ、楽しさ”に変化させるかということが大切だということがわかった。マイナス思考ではなく、常に前向きプラス思考にもっていこうと思った。
  • 勇者の階段を少しずつのぼっていったら、自分がきんちょうする場面でも、きんちょうが少し減った。
  • 勇者の旅の授業が始まってから、苦手なことに少しチャレンジできるようになった。
  • リラックスしてから、自分の気持ちが強くなっているのがわかった。
  • 前まですごく不安だったことも、「勇者の階段」や「リラックス法」のおかげで、少し不安も小さくなりました。
  • いやなことがあったら、いいことを考えたらいいんだなというのを知った。こわいことをそのままほうっておくのではなく、チャレンジすることが大事というのを知った。
  • (考えたことが)別に本当になるとはかぎらないということが、すごくためになったと思う。
  • 前まで不安だったことが、今はあんまり不安にならなくなった。
  • 不安な気持ちをおさえられるようになった。
  • ぼくは不安が苦手なので、リラックスしたりして、小さくすることができました。先の事を予想しとくと便利でした。
  • 勇者の旅は不安なことをメインとしてやっている。
  • 勇者の旅の授業を受けて、自分の気持ちなどに気づけるようになった。
  • 不安を自分で小さくできるようになった。
  • 自分で最初できなかったことを、勇者の旅のかいだんをしたらだんだんこくふくできるようになった。
  • 勇者のかいだんを使っていたら、だんだん上に行けたからよかった。
  • 子どものこころの発達研究センター
  • 認知行動生理学
  • 千葉IAPT
  • 子どもみんなプロジェクト