その他の疾患についてはお問い合わせください(適応になることもあります)。
下記に挙げる疾患を対象に認知行動療法を行います。
認知行動療法は、自分の「考え方(認知)」や「行動」のパターンによって「困りごと(症状)」が続いてしまう悪循環に気づき、考え方や行動の幅を広げ柔軟にしていくことで、不安や落ち込みなどの「感情(気分)」の困りごとを解決していく心理療法です。
治療は当センターで訓練されたセラピストが一定のスケジュールで行い、標準的には16-20週で終了します。
当センターは研究機関でもあります。千葉大学大学院医学研究院認知行動生理学教授および千葉大学子どものこころの発達教育センター長である清水栄司ほか実績ある研究者の指導のもと、認知行動療法の発展に寄与する研究を行いながら認知行動療法を実践しています。当センターで認知行動カウンセリングを受ける方には研究へのご協力をお願いすることがあります。
現在対象を募集している臨床研究はコチラを御覧ください。
対人、社交の場面で「恥ずかしい思いをしようとする」ことに対して、強い恐怖や不安を感じてしまい、日常生活に支障を来します。
様々な行動実験とその検証を通じて、対人・社交場面での不安を軽減していきます。それによりこれまでに回避していた行動も出来るようになり、行動範囲を広げていくことが可能となります。
強迫観念と強迫行為があります。色々な症状がありますが、例えば、自分の意思に反する考えや心配が頭の中に浮かび、そのことにより不安や不快感を一時的に楽にするために、「手洗い」や「確認」のような強迫行為を繰り返してしまいます。
強迫観念と強迫行動がお互いに強め合う悪循環になっている場合は、曝露反応妨害法を用います。積極的に取り組むことで症状をかなり改善させることができます。難しい場合にも認知行動療法の他の技法を取り入れ、症状の改善と日常生活の回復をめざします。
強迫症は児童年令からも対象に研究を行っています
突然理由もなく、動悸、呼吸困難、胸痛、めまい、吐き気などの身体症状が出現し、激しい不安に襲われるといったパニック発作を繰り返して、日常生活に支障をきたす心の病気です。
症状を維持させている「考え方」と「感情」と「行動」の関係を整理し、必要なスキルをセラピストと一緒に練習していきます。例えば「認知の再構成」や「注意シフトトレーニング」です。
認知の再構成: 例)「動悸→心臓発作→死」という考え方(認知)を修正します。
注意シフトトレーニング:例)些細な身体の変化に敏感になってしまっている意識を、身体の内部から外部へと、さらには外部から身体へと自在に向けていくことを目指します。
「薬物療法後も症状が残るパニック症患者を対象とした個人認知行動療法の臨床試験(通常診療群を対照とし、併用群の有効性に関するランダム化比較試験)」
何をしても楽しめない、興味が持てない(意欲低下)、気分が落ち込み絶望的になる(抑うつ気分)、食欲がない(食欲低下)あるいは食べすぎてしまう(過食)、寝付きが悪く(入眠困難)、寝たとしても途中で起きたり早く起きてしまう(中途覚醒・早朝覚醒)、死んだほうがましだと考えたり自傷行為をしてしまう(希死念慮)、動きや話し方がゆっくりとなる(緩慢)、もしくはそわそわして落ち着けない(焦燥感)、自分をダメだと感じ、家族や周囲に申し訳なく思えてしまう(罪悪感)、など様々な症状が生活に一定期間以上影響します。
特に自己批判や恥感情が強い方へは、それらを緩和することに特化した認知行動療法(コンパッション・フォーカスト・セラピー)を集団あるいは個別で提供しています。
短時間に大量の食べ物を食べそれを自制できない「過食エピソード」が繰り返されます。体重の増加を防ぐために、自己誘発嘔吐、下剤や利尿剤ややせ薬を使用したりする「代償行動」、極端な食事制限、過剰な運動をすることがあり、食べ物や体重・体型にとらわれてしまいます。そのために日常生活や社会生活に大きな障害が出ます。
「食行動」の問題と「気持ち」や「考え方」の癖、「身体の調子」の問題が維持されている仕組みを明らかにし、「食べることがやめられない」、「体重が気になって食べられない」といった行動を改善し、毎日をよりよく過ごすことを目標とします。
遠隔認知行動療法の研究を開始しています。PCやタブレットを使って、診察室の治療者と、相談者の自宅を結び、遠隔認知行動療法を行います。
症状によっては認知機能改善療法を勧めることもあります。
本質的には病変が持続して存在していることを示す痛みが医学的に示される原因が無いにも関わらず慢性的に生じている状態が慢性疼痛です。「身体症状に関連する過剰な考え・心配・感情・行動」が痛みを作りだす要因として捉えられています。
疼痛が慢性化する原因は痛みの悪循環に陥ることにあります。痛みが慢性化する原因には、認知や行動の悪循環が大きく関係しています。認知行動療法では、痛みの原因探求を目標とはせず、痛みによる不快感をコントロールする感覚を持ちつつ、日常生活を取り戻していくことを目標とします。
慢性疼痛に対する認知行動療法の効果は海外では最もエビデンスレベルが高いのですが、日本ではまだ有効であることがしっかり検証されているとは言い難い状況です。当センターでは実践を通じてより良い慢性疼痛の認知行動療法プログラムを皆さんと作り上げていきます。
発達障害のひとつです。主に、「対人交流とコミュニケーションの質が独特であること」「著しく興味が限局すること、パターン的な行動があること」といった行動特徴があります。
対人交流:他人の情動に対してどう反応するか、喜び・興味や達成感を分かちあうときの姿勢
更に感覚の過敏、もしくは鈍感が見られることもあります。
自分を知り、自分の特性が関係する日常生活上の困難に立ち向かう対処法を学んでいきます。
「発達特性の心理アセスメント面接」:数種類の心理検査を数回に分けて施行し、総合的な結果をお知らせいたします。この心理アセスメントを行うことで、患者さんの重症度、個別性、強み、苦手なところ、今後の治療や支援の方向性、を知ることができます。このアセスメントはトータルで5-6回ほどかかります。
「スキーマ療法」:気質的で慢性的な人生上の問題(対人関係、感情コントロールの問題など)に効果のある、認知行動療法の仲間である心理療法です。適正のある患者さんにはおすすめすることがあります。30回ほどを目処に行っています。
ACATとは、自閉スペクトラム症(ASD)を持つお子さんの親子参加式での心理教育プログラムです。自分のASDの特徴をよく知って、「うまく付き合える」ようになると、生活がスムーズになることが分かっています。ACATでは、認知行動療法を使って、自分のASDをよく理解することでどんな効果があるのかを調べます。
セッション | 扱う内容 |
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セッション1 | 症状の詳しい聞き取りと認知行動療法導入前の正確な評価 |
セッション2 | 疾患についての理解を深める |
セッション3 | 問題の悪循環をとらえる(個別モデルの作成) |
セッション4-5 | 症状を維持している行動(例:安全行動)や注意の向け方などについて把握し、対処法を考える。 |
セッション6-9 | 今まで辛かった場面で行動実験を繰り返しながら、事前予測の検証を行う。 |
セッション10-11 | 行動実験の検証から、行動時に伴う記憶や偏った感情をより適応的に再構成していく。 行動実験の検証を併せて行っていく。 |
セッション12-13 | 症状によってこれまでできなかった行動を現実に出来ることから実践していく。 |
セッション14 | 残っている課題の整理と対策を考える。 |
セッション15 | 今後の生活で学習したことを実践していく時に起きる問題の対処を考える。 |
セッション16 | セッションの総合的な振り返りを行ない、一旦卒業。 |
フォローアップ (1ヶ月、6ヶ月、1年) |
セッション終了後の状態を確認。問題点の把握と対策を検討する。 |
※ここに示したのはあくまでも例です。セッションの進行と課題は個別にアレンジされ、セッション数も時には20回以上が必要な時もあります。
※また、認知行動カウンセリングの進行には正確な症状評価が不可欠です。毎回の評価とともに、時に別な評価をすることもあります。特に症状の成り立ちに個別の特性が絡んでいる場合には、脳の認知機能特性を見る知能検査や、コミュニケーションの在り方、幼少期の発達特性などを知るための検査を追加します。
問題となる症状を維持させる「こだわり」よりも、その前提となる思考スタイルに働きかける神経心理学的介入方法です。目的は2つあります。1.「白黒思考」や「木を見て森を見ず」となるような「思考の切り替え」と「ものの見方」の2つの認知機能に介入し改善を図ること。2. 自身の思考スタイルに気づくこと。そして、新しい思考スタイルを取り入れて、日常生活場面で応用できるようになること。
例えば、摂食障害へ適応するときには他の治療法と違ったこんな特徴があります。
セッションは毎週1回60分で合計10セッション行います。ゲーム的で楽しい課題をこなしながら、柔軟な思考と全体的なものの見方をトレーニングします。
千葉大学では主に摂食障害の方に行っています。元々認知機能改善療法は、Cognitive Remediation Therapy(CRT)の日本語訳で、イギリスのロンドン大学のTchanturia先生が考案した拒食症の方のための治療法ですが、拒食症を含む摂食障害だけでなく、発達障害、強迫症や老年期疾患にも応用されています。