UGSCD CHIBA UNIVERSITY

連合小児発達学研究科 千葉校
こころの認知行動科学講座

MENTAL
HEALTH
SUPPORTING

メンタルヘルス支援学研究領域

【メンタルヘルス支援学研究領域】

児童・思春期・成人期のそれぞれにおいては、その発達段階に応じてメンタルヘルスの問題が存在することがあります。 その問題が、神経発達症や、不安や抑うつなどの精神疾患の問題がある場合、早期発見と早期支援がその後の社会的適応・心理的適応に大きく影響するため、専門機関をはじめ、家庭や学校、地域社会において、エビデンスのあるアセスメント方法および支援方法の確立と活用が急務となっています。
本領域では、子どもから成人までの発達に応じたメンタルヘルスの諸問題の予防、および神経発達症のアセスメントに基づく診断およびエビデンスに基づく心理的介入の観点から、子ども本人とその家族、および集団に対して、保健、医療、福祉、教育等の多様なバックグラウンドをもつ専門職が出来得る、実証に基づく支援に関して介入法の開発と検証の研究を行っています。
現代の高度情報社会に対応するために、デジタルメンタルヘルス支援学の展開を目指し、WEBでの子どものストレスチェックの社会実装の研究、そして、閾値下うつ、閾値下不安、閾値下不眠など(メンタル不調の症状を有しているが、未病の状態)に対するヘルスケアを提供するコンピュータアプリの研究を進めています。
また、社会的貢献として、メンタルヘルスの諸問題の予防、および神経発達症のエビデンスに基づく心理的介入に関する教育講演を、地域や学校、関連学会等で積極的に行い、啓蒙活動および介入指導者の育成にも努めています。

研究活動報告

■学校現場での認知行動療法を用いた予防アプローチに関する研究と社会実装

認知行動療法は治療のみならず予防にも活用できるという研究結果が蓄積されるようになり、欧米諸国の学校現場では、認知行動療法に基づく予防教育プログラムが積極的に活用されています。 しかし、欧米で開発されたプログラムは日本の学校現場には馴染みにくいという問題があり、日本の子どもの社会文化的背景を踏まえた独自のプログラムの開発が必要とされていました。 以上のことから我々は、不安の認知行動療法に基づく予防教育プログラム「勇者の旅」を開発し、各地の教育委員会や小・中・高等学校と連携しながら、介入研究および社会実装を進めています。
「勇者の旅」サイトはこちらをご覧ください

①研究

  • 地域の子ども達とその保護者に参加を呼びかけ、「勇者の旅」プログラムの予備的研究を行い、小学校高学年児童への実施可能性を検証しました(Urao et al., 2016)。
  • 県内の公立小学校5年生の学級にて、「勇者の旅」プログラムの授業実施前後に、不安症状を測定する質問紙調査を実施し、プログラムを受けなかった児童生徒との比較において、プログラムを受けた児童生徒の不安スコアが有意に低減することを確認しました(Urao et al., 2018)。
  • 養護教諭が小学校で朝学活の時間を活用した効果検証研究を行い、プログラム実施学級児童の不安低減効果を確認しました(Urao et al., 2022)。
  • 「子どもみんなプロジェクト」を通じ、千葉県、鳥取県、京都府長岡京市の小学校30校の協力を得て大規模な効果検証研究を行い、プログラム実施学級の不安低減効果を確認しました(Urao et al., 2021)。
  • 千葉県、鳥取県、埼玉県吉川市、福岡県八女市の小学校24校の協力を得て、追試研究を行い、同様に不安低減効果を確認しました(Kaichi et al., in preparation)。
  • 中学生を対象とした予備的研究(Ohira et al., 2019)や、通信制高校で実践した予備的研究(大下他、投稿準備中)などにも取り組み、それぞれ実施可能性を検証しました。
  • GIGAスクール構想による一人一台端末の時代に合わせ、子どもたちがPCやタブレット端末からも「勇者の旅」プログラムの内容を学習できるよう、e-learning版の開発と効果検証に取り組んでいます。
  • 子どもの不安および予防教育プログラムの介入効果に影響を与える要因を検討するため、保護者や学校教師を対象にした質問紙調査研究を進めています。
②社会実装
  • 小中高等学校の教諭・養護教諭等を対象に、「勇者の旅」指導者養成研修会を定期開催し、学校現場にて授業実践できる指導者を養成しています。
  • 教育委員会や学校現場等からの依頼を受け、認知行動療法に基づく予防教育に関する講演会や研修会を行っています。
  • 「勇者の旅」ワークブック(小学生版、中高生版、中国語版、英語版)の作成や、e-learning教材の開発などに取り組んでいます。

■デジタルメンタルヘルスの研究拠点として、WEBでの子どものストレスチェックの
社会実装の研究、閾値下うつ、閾値下不安、閾値下不眠など(メンタル不調の
症状を有しているが、未病の状態)に対するヘルスケアを提供するコンピュータ
アプリの研究を進めています。

WEBでの子どものストレスチェックサイトはこちらをご覧ください。

コロナ禍での児童生徒の自殺者数の増加への対策として、学校保健安全法を根拠とし、小学校高学年、中学校、高校において、メンタル不調の未然防止の一次予防の強化を目的とし、WEB上での質問に回答してもらうことで、子どものストレス(心理的負担)の程度を把握し、本人にフィードバックを行い、高ストレスへの気づきを促し、本人の申し出により、教諭、養護教諭、スクールカウンセラー等による教育相談、面接指導につなげることができるようなシステムとネットワークの構築を進めています。

心理学・精神科学のデジタルメンタルヘルス研究拠点サイトはこちらをご覧ください。

日本は長寿などの体の健康に関しては世界トップですが、心の健康に関しては低迷しているため、心の健康の向上が強く求められています。心の健康の向上には、うつ・不安の治療法として代表的な薬物療法に勝るとも劣らない効果を持つ心理療法、「認知行動療法」を必要な人全員が受けることができるようにすることが重要です。
そのため、認知行動療法をコンピュータ・アプリとして提供するデジタルセラピューティックスの研究が世界中で進められています。 私たちは、睡眠、うつ・不安、疼痛、摂食、発達等の幅広い心身の問題に対処する認知行動療法を活用したデジタルヘルスケア技術を開発し、その効果を明らかにして、社会の皆さんに使ってもらいたいと考えています。

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