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慢性疼痛とは

慢性疼痛は世界の20%の人が罹患し、医療機関を受診する人の15%から20%を占めるとされています(Treede et al., 2015)。我が国における慢性疼痛を有する患者数は近年のいくつかの大規模調査によると、全人口の約14%から23%と報告されています。しかし、治療に満足している患者の割合は慢性患者の約4分の1に過ぎず、大きな課題となっています(服部、2004、2006)。

慢性疼痛は、通常の治癒の期間を超えて(3カ月以上)持続し、生理学的な痛覚の急性期の警告の機能を失っている痛みとして理解されています。世界保健機構(WHO)による国際疾病分類第11版(ICD-11)では、慢性疼痛の分類として、以下の7グループが提唱されています。(1) 一次性慢性疼痛 chronic primary pain, (2)がん性慢性疼痛 chronic cancer pain, (3)術後痛および外傷後慢性疼痛 chronic posttraumatic and postsurgical pain, (4)慢性神経障害性疼痛 chronic neuropathic pain, (5)慢性頭痛および口腔顔面痛 chronic headache and orofacial pain, (6)慢性内蔵痛 chronic visceral pain, (7)慢性筋骨格系疼痛 chronic musculoskeletal pain。特に、(1)の一次性慢性疼痛 chronic primary painは、痛みが1か所以上の部位に3カ月持続し、重大な感情的なつらさや機能障害と関連し、他の慢性疼痛の病態では説明できないものとされています。

痛みは主観的な感覚・感情のため、患者が痛いと訴えるのであればそこには痛みがあると考えます。したがって生理学的な痛みの原因が確認できない場合でも、慢性疼痛はあり得ます。治療のためには慢性疼痛を維持するあらゆる要素を多角的に把握する必要があり、そのためには様々な専門分野の多方面からのアプローチが有効とされています(集学的アプローチ)。認知行動療法もその一つとして、国際疼痛学会でも強く推奨されています。